研究概要 |
和歌山工業高等専門学校がある和歌山県紀南地方では,梅の栽培が全国一盛んである。梅干の製造工程で排出される梅酢・調味液廃液も著しく増加しており,最終的に活性汚泥法により処理されているのが現状であるがその能力は限界に近くなっている。本研究では,現在の処理システムの改善,廃液中に含まれる有用資源の回収・再利用を目的とした。 初めに,電気透析試験器を用いて食塩純成分系における電気透析実験を行った結果,塩濃度は時間経過と共に指数関数的に減少した。実測値から脱塩時間と塩濃度の関係式を求めた。 架橋キトサン繊維における有機酸(酢酸,リンゴ酸,および,クエン酸)の吸着平衡関係を測定した結果,いずれの有機酸も初濃度に依存せず上に凸な吸着平衡関係を示した。吸着平衡関係の実測値は,ラングミュア式で良好に相関できた。有機酸の未解離カルボキシル基と吸着剤の固定アミノ基との酸・塩基中和反応による化学吸着と考えられる。塩酸吸着による固定アミノ基濃度を測定した結果,酢酸の飽和吸着量と固定アミノ基濃度は,ほとんど一致した。有機酸の飽和吸着量は,有機酸の分子量が増加するにつれて減少した。酢酸の吸着平衡関係に及ぼす塩濃度の影響を調べた結果,塩濃度が増加するにつれて酢酸の吸着量は減少した。典型的な梅干調味廃液に含まれる塩濃度に対して約1%の塩濃度となるよう調整した実験系では,塩による吸着阻害が若干見られた。前述の電気透析実験で得られた実験式から計算した結果,本研究で用いた電気透析器によって初期塩濃度の1%の濃度にするために必要な時間は,約10時間であることが判明した。 以上のことより,適切な脱塩処理を行った溶液に対して,架橋キトサン繊維は有望な有機酸回収用吸着分離として適用できる可能性のあることが分かった。
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