研究概要 |
スズの同素変態におよぼす加速因子の探求を主たる目的として,純Snおよびそれと銅との接合体を用いて,核生成および成長に関する温度因子について検討し,以下の結果が得られた。 (1)Sn単体においては,変態のピーク温度は,-40℃付近にあることが確認された.また,いずれの温度においても,焼鈍材に比較し,圧延材の変態速度は明らかに速く,残留応力が変態を加速することを示唆する結果が得られた。 (2)Sn/Cu接合体においても,Sn層において同素変態が確認された。同素変態を起こした接合部では,接合界面付近の金属間化合物層(Cu_6Sn_5)から破壊する結果が得られた。これは,はんだ接合体の分離が同素変態により可能なことを示す重要な結果と考えられる。また,Sn/Cu接合体においても,ひずみを与えたもののほうが,変態に要する時間は短いことが明らかとなった。 (3)変態を抑制する合金元素としては,Bi, SbおよびPbが効果的であることがわかり,これらの元素が添加された場合は,いずれの温度においても,同素変態は確認されなかった。Agについても変態を抑制する効果があることが確認された。変態抑制の効果が少ない元素としては,Cuがあげられ,Sn-0.7mass%Cu合金においては,同素変態が確認された。これは,Sn/Cu接合体において接合時にCuが被接合部材より混入しても同素変態が起こることを意味し,今後の分離可能な接合体の設計に大いに役立つ結果となった。その他,同素変態を促進する元素として,Alが確認されたが,詳細は不明であり,さらなる調査を必要とする。 これらの結果を踏まえ,次年度はSn/Cu接合体,Sn-Cu/Ni接合体を用いて分離の調査を行うこととする。また,加速元素の添加としてAlおよびダイヤモンド粒子の添加を試み,さらに加速因子としてのひずみ量を定量的に評価することを目的とする。
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