【目的】高次の非線形操作を行う量子計算では、複数ステップの量子演算直後の過渡的な量子状態を検知する必要がある。また、量子状態の読み出しは、個々の量子ビット担体に対して行わねばならない。そこで本研究では、単一の量子ビットにおけるコヒーレントな光応答の計測手法を開発する。従来、集団平均操作に埋もれていた微視的な量子効果の探索を可能とし、量子ドットを舞台とした多量子ビット演算の実現を目指す。 【研究の経過】単一の半導体量子ドットからの微弱な光学信号を検知するための、高安定な低温顕微分光システムを構築した。装置評価としてGaAs/AlGaAs自己形成量子ドットを対象として顕微蛍光観測を行い、回折限界で定まる小数個数の量子ドットからの光学信号を分別的に確認した。量子計算読み出し操作に必要な、高効率の励起レーザー光除去装置を提案し開発した。 【研究の成果】単一量子ドットからの蛍光信号を観測し、多体的電子状態の生成を確認した。また多体的相互作用によってデコヒーレンスが誘発されることを観測した。高効率のレーザー散乱光除去フィルターを開発し、2桁以上の迷光除去に成功した。 【今後の見通し】量子ドットを用いた量子演算を実現するためには、高精度に設計されたナノ構造を対象に、高度な非線形光学操作を実施せねばならない。今後精緻な実験を行う上での実験環境がいよいよ整い次年度以降、量子操作に向けた挑戦的な実験に着手する予定である。
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