研究概要 |
分子内電子勾配を有する球状高分子内空間における金属イオンの集積とクラスター化に関する研究を行い、以下の研究成果を挙げた。 金属集積部位としてイミンユニットを30個有する新型球状高分子を開発した。この球状高分子形態は透過型電子顕微鏡観察や原子間力顕微鏡観察から、直径約2.3ナノメートルのナノ粒子であることを見出した。この球状高分子内部では、分岐鎖の密度がその中心(コア)と外周部で異なり、内部が「疎」で外側になるにつれ「密」になる密度勾配が形成されている。この形状特異性に加え、この球状高分子においては、その高度分岐構造に起因してイミンの電子密度が各世代で段階的に異なる電子密度勾配が形成されていることを、紫外可視吸収スペクトル測定から見出した。今回この電子密度勾配を利用することにより、塩化スズ以外に塩化金が球状高分子内部に段階的に集積されることを見出した。イミンと1対1で錯形成する塩化金を、球状高分子を溶解させたクロロホルム/アセトニトリル溶液に添加すると、紫外可視吸収スペクトル測定において、イミンのπ-π*遷移に帰属される吸収が錯形成に基づいて長波長シフトすることが確認された。その際、等吸収点の位置が、塩化金を0-2、3-6、7-14、15-30当量加えている間の4段階でシフトすることを見出した。各段階での塩化金の当量数2,4,8,16は、球状高分子内での各世代のイミンの数とぴったり一致することから、塩化金は高分子内のイミンとランダムではなく、中心から周辺部へと世代順に段階的に進行していることを見出した。さらに、錯形成後、化学的あるいは光化学的に塩化金を還元することで微小金クラスターが形成されることを透過型電子顕微鏡より確認した。
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