非平衡COプラズマ中の振動励起分子の反応を用いてカーボンナノチューブの低温合成実験を行った。プラズマリアクターは内径7mmのPyrex製U字管の中にSUS製サンプルステージとNi電極棒を挿入した構造となっており、サンプルステージを陰極、Ni棒を陽極として、両電極間に直流高電圧を印可しCOプラズマを生成させた。この際、放電管自体を液体窒素で冷却し、プラズマ中の非平衡性を強め、振動励起分子の生成を促進させた。基板材質としては、単結晶Si、ほう珪酸ガラス、PETを用いて合成実験を行った。基板上への触媒金属微粒子の調製方法としては、酢酸金属のエタノール溶液を用いたディプコーティング法、Ni電極を用いたスパッタリング法の二つの方法を試した。合成した炭素膜をSEMにより観察を行ったところ、液体窒素冷却下において直径数十〜数百nm、長さ数十μm程度のカーボンナノファイバー(CNF)の生成を確認することができた。その時の合成条件は、放電圧力800Pa、ガス組成CO/Ar=50/50、放電電流:2mA、ガス総流量:20sccm、合成時間:1〜3時間であった。Raman分光から、グラフェンシートに特有のG-bandに強いピークを持つことを確認したが、FT-IRスペクトルではC=0の吸収ピークも確認されたことから、炭素だけでなく酸素をも含んだナノファイバーであることが示唆された。触媒調製方法を比較する実験を行ったところ、スパッタリング法を用いた方が、容易に且つ一様にCNFを合成することができた。基板材質のCNF合成への影響を調べる実験においては、ほう珪酸ガラス上に合成されたCNFが最もその直径が細く、また、PET、単結晶Si基板に比べ均質なCNFの合成を行うことができた。このように、液体窒素冷却下においてCNFが合成できたことは、工業的にも学術的にも大変興味深い。
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