本年度は、アントラセンとペリレンで構成されるデンドリマー分子の構築とその光捕集メカニズムの解析を中心に研究を展開し、以下の成果を得た。 前年度において明らかとした、アントラセン-ペリレンデンドリマー分子における光捕集機能の詳細を検討するため、種々の構造を有するデンドリマー分子類縁体の合成を行った。具体的には、ペリレンをコアに配し、その周囲に4〜24個のアントラセンを結合した合計10種類のデンドリマー分子ライブラリーを構築し、それらの分子内光捕集機能について検討した。各デンドリマー分子ライブラリーの蛍光発光スペクトルからは、全てのライブラリー分子において、デンドリマー分子内のアントラセンで吸収した光エネルギーが効率よくペリレンへと移動することが明らかとなった。さらに、このエネルギー移動効率について分子構造との相関関係を検討したところ、これらのエネルギー移動効率は、アントラセンとペリレン間の距離に依存せず極めて高効率にエネルギー移動が進行することが明らかとなった。また、ペリレンの周囲にアントラセンが密集している分子構造においては、アントラセンからペリレンへのエネルギー移動だけでなく、アントラセン同士での移動も同時に進行することが明らかとなった。通常の光エネルギー移動現象は光エネルギーを授受する発色団間の距離に大きく依存することが知られているものの、当該研究で得られた成果は、従来の法則の範疇では説明できない現象を含むものであることが明らかとなった。
|