ナノ構造強磁性体の磁化反転特性を調べるため、精密三軸ピエゾプローブシステムを用いた微小磁界測定の手法を確立するとともに、極微磁性体配列群の磁化反転特性が静磁気相互作用をどのように反映するかを計算機シミュレーションにより調べた。 1)10μm×10μm×100nmのCo矩形微粒子を20μm周期で正方格子配列させた試料を作製し、GMR磁界センサー素子と精密三軸ピエゾプローブシステムを組み合わせた装置により、その浮遊磁界分布を測定した。GMRセンサを測定試料にsub-μm以下にまで近接させることにより、0.1Oeの測定感度で漏洩磁界分布を測定することに成功した。また、測定した磁界分布をもとに任意のCo矩形微粒子がGMRセンサの感磁部直上にくるように相対位置を制御し、外部磁界を掃引しながら磁気抵抗変化を測定することにより、Co矩形微粒子1個の磁化反転過程を検出することができた。 2)静磁気結合した磁気微粒子配列群における任意微粒子の磁化反転特性を計算機シミュレーションにより調べた。本研究では、磁性ランダムアクセスメモリ(MRAM)で用いられる電流一致選択方式による任意微粒子の磁化反転制御を想定している。そこで、任意微粒子を選択磁化反転できる動作電流余裕度、および磁化の熱安定性の微粒子間距離依存性をを詳しく調べた。その結果、F×F×t磁気微粒子を2F周期で9×9個配列させた場合、F【greater than or equal】80nmでは選択的磁化反転が可能な動作電流余裕度が20%を超えるのに対し、F=60nmでは導体電流磁界分布の局在性劣化を反映して電流一致選択動作が不可能になることがわかった。ただし、隣接導体に逆向きの電流を印加するFlow back方式を用いて磁界分布の局在性を改善することにより、F=60nmでも20%程度の動作余裕度を確保できることがわかった。
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