研究概要 |
直接メタノール燃料電池は水素を燃料にした場合に比べ著しく出力が小さい。原因は反応中間体である一酸化炭素が燃料極の触媒被毒もたらし、活性が低下するためである。そこでメタノール酸化の反応機構を分子レベルで調べるため金電極表面にカーボン担持白金触媒をつけて赤外分光測定を行った。メタノールが一酸化炭素に酸化される電極電位より低電位側においてCHx変角振動に対応する吸収バンドが観測された。同位体による測定も行うことによって、メタノールのメチル基が脱水素反応によって生じた中間体種CHxOH(x=1,2)であると同定できた。また一酸化炭素のCO伸縮振動のバンド強度が非常に弱いため、この中間体種は触媒表面において一酸化炭素よりも吸着量が多いと考えられる。一方、空気極においては酸素還元反応が遅いために電圧低下が起こる。大気中において白金触媒表面を表面増強ラマン散乱の測定を行った結果、白金のhollowサイトに吸着した酸素原子のPt-O伸縮振動を観測した。触媒表面上は常に吸着酸素で覆われていることが明らかとなった。これまで白金表面上の酸素還元反応においては分子状酸素が表面に吸着しプロトンが酸素分子と結合する段階が律速と考えられていたがくまず酸素分子の解離が起こり、その後のプロトン化が律速段階であると考えられる。 カーボン担持白金触媒作成法の検討も行った。従来の燃料電池触媒作成法よりも簡便な無電解メッキによりカーボンブラック上に白金触媒を担持させた。還元剤や白金錯体の種類を変え複数の方法で作成し、透過電子顕微鏡および発電試験を行った。その結果、従来の触媒とほぼ同じ性能の触媒が得られた。白金ナノ粒子の粒子サイズによる活性の違いはみられず、また活性の高い触媒はバルクと同様な格子を形成している白金ナノ粒子であることが明らかとなった。
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