1、水素および酸素を用いた燃料電池において酸素還元の反応速度が遅いため出力密度が小さいのが原因となっている。酸素還元反応のモデルとしてNi(111)表面に酸素と水分子の共吸着した構造について表面X線回折による構造解析および赤外分光による水分子の解離過程の観測を行った。Ni(111)表面のfcc hollow siteにp(2x2)で酸素原子が吸着し、空サイトとなるon topサイトに吸着した水分子の構造を決定した。ニッケルは水分子のOH結合を解離させやすい金属だが酸素前吸着した表面では解離しにくいことを明らかにした。一方、酸素が吸着していないNi(111)表面では、白金、ルテニウムなどの他の最密充填表面と同様に水分子は環状6量体を形成することが判明した。 2、触媒を効率よく機能させるためには、電解質高分子とガス層が均一に触媒に接する三相界面が必要である。膜電解質接合体(MEA)の作成には、高分子電解質をアルコールに溶解させたものに触媒を懸濁させてカーボンペーパに塗布するが、この方法では、電解質が触媒の細孔には充填されない。そこで、この懸濁液に分子サイズの小さくプロトン伝導性のあるクロロメタンスルホン酸を混合することにより、いままで使われていなかった触媒を有効に使うことが可能となり、発電効率が10%増加した。 3、無電解メッキ法による白金担持カーボン触媒の作成において、触媒の表面積を増加させるため、(1)カーボンブラックを、二酸化炭素雰囲気下で加熱することにより、高表面積化させた。(2)エチレングリコールを還元剤とした場合、高分散した白金微粒子の作成に成功した。これにより、従来の3分の1の触媒量で同等な性能の燃料電池セルの開発に成功した。
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