本年度は、量子ドットの配列化に向けて、以下の二つの方法でテンプレートの作製を行い、ドットの作製を試みた。 1.基板表面構造を利用する方法:最もGaリッチなGaAs(001)-(4x6)表面に対して、Gaのクラスターが周期的に配列した構造が提案されている。したがって、この表面上では自体がドットの二次元配列が実現されていることになる。しかしながら、この構造を持つ表面を再現性よく作製したとの報告例はきわめて少なく、この構造モデル自体を疑問視する意見も根強い。本研究では、昨年度までにGaAs(001)-(4x6)構造を作製する方法を確立し、本年度はその原子配列を評価した。その結果、最表面のGa-Asダイマーと第三層目のGa-Gaダイマーを基本構造とするモデルを提唱した。この構造モデルは従来のGaクラスターモデルとは全く異なる。一方、過去に報告された構造(Gaクラスターモデル)に類似した構造は、c(8x2)表面上に局所的に観測された。しかしながら、その秩序性は十分なものではなく、また、観測されたクラスターがGaクラスターであることの証拠も得られていない。本構造の量子ドットとしての可能性を探るためには、クラスターの素性を明らかにするとともに、その秩序性を向上させることが必要である。 次に、As安定化面であるGaAs(001)-c(4x4)の利用も昨年度に引き続き検討した。この表面を利用する際の問題点は、MBEによってAs-Asダイマー構造を持つ表面を作製する過程が非常に複雑であること、さらに、その作製過程において表面ラフネスが増加することである。本年度は、これを解決するためにAs_4分子線に代えてAs_2分子線を使用することにより、および非常に平坦なc(4x4)表面を容易に作製する方法を確立した。 2.昨年度までに、GaAs(111)A清浄表面作製方法を確立し、その上へInAs膜を成長させることにより転位の二次元ネットワークの作製に成功した。本年度は、このネットワーク上にInおよびGaのドットを蒸着し、それらの二次元配列を狙った。しかしながら、現時点で、転位線上での優先的な核形成は確認されておらず、InおよびGaの成長条件の確立が今後の課題である。
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