ナノスケール領域において顕著に発現されると期待されている量子サイズ効果は、ナノ物質のサイズ(あるいはナノ粒子の粒径)に極めて敏感であるため、そのサイズを精確に決定することが必要不可欠である。しかし従来から行われている外挿法に基づく方法では実現不可能であった。そこで本研究では、「ナノメートル原器」とも呼ぶべき単分散なナノ標準粒子の系統的な発生法の確立を目的とした検討を行った。 平成15年度は、加熱昇華法によるフラーレン類の単量体の発生法確立に取り組んだ。特に昇華点の高いC_<70>等の高次フラーレンにも対応できるよう耐熱性の高い発生源の開発に取り組んだ。またこれらを用いて安定的にC_<60>単量体を生成しこれを標準粒子として用いた測定の標準化について、測定機器である電気移動度分析器(DMA)の伝達関数の実測をナノ領域においてはじめて行った結果について論文発表を行った。また海外において成果発表も行った。一方、これらと並行してコロナ放電を応用したナノ粒子のイオン化源の開発も行った。予備的な実験から、従来法に比べて大きなサイズのナノ粒子を高効率にイオン化できることが示唆された。またこれに加えて、酸素存在下で多酸素含有クラスターを効率よく生成することを見出した。このようなクラスターは従来知られておらず、この成果についての論文報告を行った。また、クラスターの成長を促進させる研究も手がけた。実際、ナノ粒子の発生条件とクラスターの生成に関する予備的な実験も行った。
|