ナノスケール領域において顕著に発現されると期待されている量子サイズ効果は、ナノ物質のサイズ(あるいはナノ粒子の粒径)に極めて敏感であるため、そのサイズを精確に決定することが必要不可欠である。しかし従来から行われている外挿法に基づく方法ではこうしたことは実現不可能であった。そこで本研究では、「ナノメートル原器」とも呼ぶべき単分散なナノ標準粒子の系統的な発生法の確立を目的とした検討を行った。 平成17年度は、前年度開発を行ったコロナ放電型ナノ粒子凝集装置およびナノ粒子発生源を用いて、1〜10nm域における単分散標準粒子の系統的発生法について検討を行った。コロナ放電型ナノ粒子凝集装置を用いたところ、放電電流強度に依存したフラーレンナノ粒子粒径分布スペクトルが得られた。分析装置(DMA)の粒径選別分解能を高めて測定を行ったところ、10量体まで重合したフラーレンナノ粒子のスペクトルが、それぞれ他のサイズから単離して観測されることがわかった。このことは、フラーレンナノ粒子を用いることによって、10量体まではナノ定規の目盛りのように扱うことができることを示唆している。一方、その構造について計算機シミュレーションによる予測を行った。その結果、小さなサイズのフラーレンナノ粒子においては直線型の幾何構造が安定であるのに対して、大きなサイズにおいては球形に凝集した形状が安定であることが示された。一方、ナノ粒子発生源において、フラーレンナノ粒子を金属蒸気(銀など)中を通過させることによって得られるナノ粒子についても調べた。その結果、フラーレンナノ粒子の粒径に強く依存する5〜10nmの粒径をもつ金属フラーレン複合ナノ粒子を生成することがわかった。このナノ粒子の粒径は金属蒸気の発生条件によらず非常に一定の値を示すことから、これらの複合ナノ粒子についてもナノメートル原器としての応用が期待される。
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