超薄膜の構造制御はナノテクノロジーにおける基盤技術要素のひとつである。ナノレベルで薄膜の立体構造デザインを目指し、"鋳型構造のナノコピー"を検討した。具体的には、固体基板上に形状デザインされた微細構造を鋳型とし、その構造表面を超薄膜で被覆、最終的に鋳型除去によって立体的なナノ薄膜を得るというアプローチである。 研究初期段階では、基板表面上に2次元配列された球状ナノ粒子や円筒状ウィルスを鋳型とし、表面ゾルゲル法によってこれら鋳型表面を酸化チタン超薄膜で被覆した。最終的に鋳型粒子・ウィルスを除去によって、酸化チタン超薄膜かなるナノ中空構造作成に成功した。さらなる形状デザイン制御を目指し、フォトグラフィー法により鋳型構造を作成した。この鋳型表面を酸素プラズマにて表面活性化させ、次いで表面ゾルゲル法にてチタニア超薄膜で被覆した。この結果、幅200nm(高さ500nm)のライン構造からは、幅約160nm(高さ約330nm)、厚さ約10nmに矩形チューブが基板上に形成された。また直径400nmのホール型鋳型からは、その構造がそのままコピーされた支柱型屋根構造が基板上に形成された。 さらに基板上に作成された、ナノサイズでの立体構造を持つ超薄膜を、基板から取り外すことを検討した。フォトリソグラフィーにより作成された有機鋳型構造を、交互吸着法によってカチオン性およびアニオン性ポリマーを20層積層した。次いで表面ゾルゲル法で酸化チタン超薄膜(厚さ:約20nm)を形成させ、酸素プラズマ処理によって有機鋳型を除去した。この基板をイオン交換水に浸漬し、バス型ソニケータで超音波照射したところ、鋳型構造をコピーした立体構造を持つ酸化チタン超薄膜が基板から溶液中に取り外すことに成功した。
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