研究概要 |
半導体量子ドットは究極の零次元構造であり、離散的電子準位をもつ。このため、連続的電子状態をもつバルク状態とは異なる魅力的な特性をもち、レーザーなど多方面への応用が期待されている。とくに、近年、量子ドットは固体素子としてはきわめて長いデコヒーレンス時間をもつため、量子情報処理の基本素子としても注目を集めている。 本研究では、この量子,ドットの新たな制御手法としてマイクロマシンを用いて歪を介した制御手法を提案し、実際に素子を作製、電子状態制御可能であることを実証した。本年度、まず、量子ドットを埋め込んだマイクロマシン歪制御素子を設計した。歪印加部における駆動量と歪量との対応を有限要素法により求め、最適な素子を、設計、試作した。実際に試作したマイクロマシン構造において理論と計算の良い一致を得、歪による量子ドット電子状態制御のメカニズムを明らかにした。この結果は主にJournal of Applied Physics誌に掲載され、また米国物理学協会、物理学会が各種物理学雑誌から論文を選択してwebに整理するVirtual Journal of Nanoscale Science誌にも採択された。 次に、上記設計にもとづき、量子ドットを埋め込んだマイクロマシンを製作した。バイアス電圧印加により、マイクロマシン部が駆動し、量子ドットの電子準位がそれにより制御できることを実証した。また、この歪を介した制御手法は電子準位のエネルギーのみならず、そのデコヒーレンスにも影響を与えていることがわかった。この結果は主にApplied Physics Letters誌に掲載され、Virtual Journal of Nanoscale Science誌にも採択された。また、上記研究成果は国際会議「2003 International Conference on Solid State Devices and Materials」においても発表している。
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