1.多孔性薄膜の構造制御 静電気力を利用した薄膜作製法であるエレクトロスプレー法を用いて、タンパク質微粒子の集積化による多孔性薄膜の作製について検討した。電気伝導度が一定値以上のタンパク質溶液についてはエレクトロスプレー法を適用することができなかった。タンパク質溶液にエレクトロスプレー法を適用する際は、使用するタンパク質溶液の電気伝導度を透析等の処理によりあらかじめ低下させておく必要があることを明らかにした。 エレクトロスプレー法により作製したタンパク質微粒子からなる多孔性薄膜について、走査型電子顕微鏡(SEM)および原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面構造を評価した。SEM及びAFM観察の結果、(1)タンパク質溶液の濃度、(2)スプレー時間の検討によって数10〜数100ナノメートルのスケールで薄膜表面の多孔構造制御が可能であることを明らかにした。また、タンパク質溶液への高分子(ポリエチレンオキシド)の添加によって不織布状の多孔性薄膜の作製も可能であることを明らかにした。 2.多孔性薄膜の生理活性 エレクトロスプレー法によって基板上に集積したタンパク質微粒子間にグルタルアルデヒドを用いて化学架橋を行うことによりフリースタンディングな多孔性薄膜を作製することに成功した。 架橋後のα-ラクトアルブミン薄膜については、メカノケミカル(MC)法を用いてカルシウムイオンのリガンド結合によって起こる薄膜のディメンジョン変化を測定した。MC測定の結果、架橋後の薄膜も生理活性を維持していることを明らかにした。また、架橋後の薄膜については、冷蔵保存状態で2週間以上生理活性を維持することを明らかにした。
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