本研究は、静電気を利用した薄膜作製法であるエレクトロスプレー法を用いて、タンパク質微粒子を基板上に集積させることにより多孔性薄膜を作製し、そのデバイス特性を評価することを目的とする。 本年度は、マイクロ流路を持つセルを作製し、このセルを用いて薄膜表面の流動電位測定を行うことにより、多孔性薄膜のバイオセンシングデバイスとしての可能性を検討した。 1.マイクロ流路セルの作製 幅5mm×高さ1mm×長さ40mmの流路(チャンネル)を持つアクリル樹脂製のセルを作製した。このセルには数mm角サイズの薄膜試料を固定した基板を取り付けることができる。 2.流動電位測定 エレクトロスプレー法を用い、白金-パラジウムをコートしたアクリル基板上に3mm×3mmサイズのα-ラクトアルブミン(α-LA)多孔性薄膜を作製した。このアクリル基板をマイクロ流路セルに取り付け、チャンネルに電解質溶液(HEPESバッファー)を流す際に発生する薄膜界面における動電位(流動電位)を測定することによって、α-LA薄膜のカルシウムイオン応答性を評価した。薄膜の流動電位は、α-LAのリガンド物質であるカルシウムイオンを含む溶液中での電位と、リファランスとした同濃度の2価のカチオンであるマグネシウムイオンを含む溶液中での電位との間に有意差を示した。この結果は、流動電位測定によってα-LAのリガンドであるカルシウムイオンの検出が可能であることを示唆している。また、作製条件の異なるα-LA多孔性薄膜についての流動電位測定から、表面構造の違いが流動電位に反映されることも明らかにした。
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