研究概要 |
本研究は,原子内包フラーレンを人為的な操作が可能な原子(基本要素)とみなし,これを周囲の環境変化によって自己組織的に配列させることが同時に機能発現となる,新たな分子素子の創造を目指す.このために,1)原子内包フラーレンの電荷・電子状態を,分子軌道計算を用いて系統的に明らかにし,2)原子内包フラーレン群が自己組織化および構造変化するための条件を,分子動力学計算を用いて探り,さらに最終的には,3)具体的な分子素子を提案し,その実現性・可能性を確かめることを目的とする. 本年度は,2)の,原子内包フラーレン群の自己組織化・構造変化の挙動を明らかにすることを目的として,単純化した分子動力学計算を行った.第一段階として,フラーレン1つを1原子とみなして分子動力学計算を行う.原子間ポテンシャルの設定により仮想的に「原子」を作り,種々の原子からなる系の挙動を明らかにした.原子間ポテンシャルは,クラスターを用いた分子軌道計算によるエネルギーの変化をもとに設定した.Cu基板上の「原子」の挙動を「ぬれ」として捉え,設定した原子間ポテンシャルとぬれ挙動の関係を明らかにした.分子素子としては,「パターン形成」と「動的な構造変化」が起こるかが重要である.本研究で設定した原子ポテンシャルにおいては,ぬれ拡がり,結晶化,合金化などの挙動が起こる可能性を明らかにした.
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