表面プラズモン共鳴(SPR)法は、金属表面の励起状態である表面プラズモン波を利用した表面感応型の化学・バイオセンシング法である。本研究は、空間分解能の高いSPRセンサーを確立するために、(1)光近接場ファイバー型SPRマイクロデバイスと(2)SPR光学顕微鏡の2つの装置について研究開発した。このような空間分解能が高いデバイスは、生きた細胞を研究する新しいツールを提供したり、プロテオーム解析装置を小型化する技術に適用できる。 研究(1)は、近接場光学顕微鏡の光ファイバープローブ作製技術を応用することにより、マイクロスケールの円錐構造を持つSPRセンサーを実現することが目的である。本研究では、性能向上のため性能を正しく評価するシステムとして、マイクロポンプとマイクロ流路を導入し、屈折率変化の連続測定を可能とするシステムを新しく立ち上げた。円錐構造の最適化や金属薄膜の制御、表面の化学修飾を組み合わせることにより、SPRマイクロデバイスの性能は水溶液系において、今までの10倍以上の性能を向上することに成功した。また、応答メカニズムに関して、円錐構造の表面プラズモンについて新しく理論を確立し、SPRマイクロデバイスの応答部位について新しい知見を得ることができた。 研究(2)は、生きた細胞などを観測できる実用性の高いSPR光学顕微鏡を開発することが目的である。本研究では、空間分解能を評価するパターンを作製し、約10μmの空間分解能が達成していることを確認した。そして、生きた細胞の前段階として、異なる寸法のラテックス球を用意し、直径が約10μm程度までのラテックス球を測定することに成功した。 以上の研究成果は、研究環境に著しい変化が起きたため半年間で実施しなければならなかった。そのため、研究経費の使い方は当初予定していたものと多少異なってしまったが、研究成果は当初の計画通りにほぼ進んだ。
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