研究概要 |
上記研究課題の下,先ず,主体の総費用がランニング費用と終端費用からなり,さらに,取引の大きさとは独立な固定費用と,取引の大きさに比例した比例費用の2種類の取引費用が掛かる場合における主体の費用最小化問題を分析した.この主体の問題を考察するために,それを,制御を実施する時刻と制御の大きさの組で定義されるインパルス制御の問題として定式化し,定式化された問題に対し準変分不等式(quasi-variational inequalities : QVI)を用いて分析を行った.分析では先ず,QVI政策という政策を定義し,それが最適な政策であることを示すと同時に,問題の値関数も求めた.また,値関数が滑らかでない場合に,主体の問題の解となる粘性解を求めた. 次いで,2種類の取引費用を考慮した数理ファイナンスの問題例として,消費投資問題と配当政策問題を取り上げ議論を行った.消費投資問題では,ポートフォリオを組み替える際に,固定費用と比例費用の2種類の取引費用がかかる場合を考え,主体が消費することから得られる期待総割引効用の最大化問題を分析した.分析ではまず消費投資問題におけるQVI政策を定義し,それが最適な政策であることを示すと同時に,問題の値関数も求めた.一方,配当政策問題では,配当を実施する際に固定費用と比例費用の2種類の費用がかかる場合を考え,配当の期待総割引現在価値を最大化する主体の問題を分析した.ここでも同様に,配当政策におけるQVI政策を定義し,それが最適な政策であることを示すと同時に,問題の値関数も求めた.
|