研究概要 |
1.津波防災教育に向けた知識の体系化 宮城県立鼎が浦高等学校の生徒309名を対象に,津波エキスパートによる防災講座を実施し,津波防災知識の理解度と当事者意識に与える心理的影響をアンケート調査によって評価した.その結果,まず,防災講座での言語データ分析によって7つの津波防災知識体系が得られ,また,防災講座は生徒の津波災害対応への自信を知識の取得により下方修正させ,災害時の具体的対策への関心を高めることに寄与することがわかった.また,津波エキスパートによる津波防災知識要素と受講生徒からのニーズ知識要素を合わせて全津波防災知識要素と定義し,自由記述回答を親和図法によって分析した結果,計451個の知識要素からなる4つの知識体系を得ることができた.防災マップ作成に向けて,津波防災に必要な知識要素から防災マップに掲載すべき事項を,津波エキスパート,住民,自治体職員と共に再整理してきた. 2.地震津波ハザード情報の整理と可視化 (1)地震津波ハザード情報の整理 1と同様に,津波常襲地域住民と津波エキスパートを中心とした地震津波ハザード情報に関する防災講座の下,その整理を実施した.結果として,地震津波に関する科学的知識は,地震の発生メカニズム,津波が発生しやすい地盤・地形,津波の伝播特性など,7つの基本枠組みで構成された. (2)GISを活用した地震津波ハザード情報の可視化 対象地域である和歌山県広川町において,(1)で得られた地震津波ハザード情報および海底・陸上地形データを収集した.また,東北大学で開発された既存の津波氾濫解析モデルによる数値計算を行い,結果をGIS(地理情報システム)上に実装した.この成果を地域リスクコミュニケーションや学校教育の場において実用化するべく,一般ユーザー容易に画面上で操作できるグラフィカルユーザーインターフェースに関する検討を行ってきた.
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