研究概要 |
人々が都市で生活する上で電気,ガス,水道は不可欠なものであり,道路や鉄道は人の移動や物資の搬送を支える重要な社会基盤システムである.特に,大規模な地震災害が発生した場合には,道路や鉄道が救急,消防等の緊急初動や被災地への支援活動に対して大きを役割を担うことになる.このような社会基盤システムの機能が地震時において十分に発揮できない場合には社会活動や経済活動が被る損失は甚大となるため,社会基盤ネットワーク構造物の地震時における機能損失に関する評価は社会的に極めて重要である. 以上のような背景を踏まえ,本研究の大局的な目的としては,ネットワーク構造物として道路ネットワークを取り挙げ,1)これらを構成する構造システムの保有する耐震性能を明らかにした上で,2)対象とする道路ネットワークが立地するエリアにおける強震動予測地図などを活用して,ネットワークを構成する構造システムに現実的に作用しうる地震動を想定し,3)構造システムを構成する個々の構造要素の損傷の度合いを確定的あるいは確率的に明らかにするとともに,4)このような構造要素の「ミクロな」損傷度と道路ネットワークの機能性の関連を直接的に指標化するものである. その中でも平成15年度には,「道路ネットワークの地震時に求められる機能とは何か?」という命題を橋梁構造システムと関わり合うそれぞれの立場に応じて具体的に明示化した上で,機能が失われ,弱まった影響をコストで定量的に評価することを試み,これらの評価手法に関して全体フレームの構築を行った.具体的には道路ネットワークとして機能性が多様に要求されている首都圏あるいは関西圏に立地する高架道路ネットワークを対象として取り挙げ,1)これらの地震時における機能性を明示化した上で,2)ネットワークを構成する構造物の「ミクロな」損傷と1)において明示化した地震時における機能の連関を明らかにした.地震時において道路ネットワークに求められる機能の明示化にあたっては,「震災波及帰着構成表」を提案するとともに構造物の「ミクロな」損傷と被災度の連関を「損失マトリックス」として概念整理を行った.さらに,構築した「損失マトリックス」に基づき,1995年の兵庫県南部地震の際に被災した阪神高速道路3号神戸線を対象として実証的なデータの収集を行うとともに,損失コストの試算と合わせて本研究手法の検証を行った.
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