研究概要 |
枯草菌の転写制御の全体像を明らかにするために、これまでに様々な培養条件下における遺伝子発現の変化をDNAアレー法で解析してきた。そこで、次に遺伝子発現の変化と転写因子の関係を明らかにすることをめざした。枯草菌のゲノム情報から転写因子と考えられるもののうち、細胞増殖に必須のsigA,yycF,birA,bkdR以外の280の転写因子について、遺伝子破壊株を作製した。これらの転写因子のうち既知のものなど機能する条件が明らかか、もしくは推定できる転写因子について、遺伝子破壊株を用いてDNAアレー解析を行い、75の転写因子についてそのレギュロンを決定した。 また、機能未知の転写因子について調べるために、レプレッサー型の転写因子について、対数増殖機の遺伝子破壊株の発現プロファイルを解析した。その結果、機能未知の転写因子が制御する遺伝子は、各1〜数遺伝子と非常わずかで、またそれらは、通常実験室で取り扱う培養条件では,発現しないことが分かった。 遺伝子破壊株を用いたDNAアレー解析では、転写因子自身のオートレギュレーションについては、情報を得ることができない。そこで、転写因子のオートレギュレーションについて調べるために、各転写因子遺伝子上流にpMutinプラスミドを挿入することで、転写因子のプロモーター活性をlacZレポーターでモニターし、同時に転写因子の発現をIPTGで誘導できるspacプロモーターの制御下においた。この株を用いてIPTGの有無によるβ-ガラクトシダーゼ活性の違いを調べた結果、約70の転写因子でオートレギュレーションが確認された。 これらの成果の一部は、京都大学の金久教授グループが運営しているBSORF(http://bacillus.genome.ad.jp/)で公開している。
|