研究概要 |
現在、約90の転写因子欠損株のマイクロアレイデータをMOPS培地における対数増殖期について取得した。さらに、同じMOPS培地に16種類の金属を加えることによりストレス応答を誘導し、転写プロファイルデータを取得した。この結果から、それぞれの金属ストレス条件下において、転写が上昇、あるいは下降する遺伝子群が判明した。興味深いことに、遺伝子プロファイルはいくつかのグループに分類され、それぞれのグループの応答は、その応答に特異的なプロファイルを有していた。これらの遺伝子の中には、通常の培養条件ではほとんど発現していないと思われる遺伝子(特に膜たんぱく質をコードする遺伝子)も含まれており、本解析結果は、機能未知遺伝子の機能解析の一助になるものと期待される。加えて、いくつかの転写制御因子の発現が特定の金属ストレスの条件下において変化していることが確認された。これらの中には機能未知の転写制御因子も含まれており、これらの転写制御因子によりストレス応答が制御されている可能性が示唆された。さらに、多くの条件下において、RpoE, RpoS, RpoHレギュロンに属する遺伝子の発現誘導が強くかかっており、これらの選択的シグマ因子が金属ストレス応答に際しても、非常に重要な役割を果たすことが強く示唆された。これらの結果は、さまざまな金属ストレスに対応して、複数のストレス応答機構が選択的に誘導されていることを示している。今後は転写因子欠損株のテータと金属ストレスのデータを比較することにより、さらにストレス応答機構のシステムの解明に取り組みたい。
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