本研究では線虫の胚性致死遺伝子について、孵化後特異的に遺伝子機能破壊をする。L1-soaking RNAiを網羅的に行い、胚性致死遺伝子の孵化後の機能を明らかにすることを目的としている。これらの結果から、発生プログラムにおける遺伝子の複数の機能と使い分けについて理解を進められると考えている。 申請者の属する研究室では、非重複のcDNAセット(国立遺伝研・小原雄治教授より供与)をRNA合成の鋳型として用い、四齢幼虫(L4)に対するsoaking RNAi法によって体系的遺伝子機能破壊を行ってきた。現在までに約6000個の遺伝子についてL4RNAiを行った結果、約14%がF1世代で胚性致死であった。本研究では、この胚性致死を示した遺伝子について、L1幼虫に対してRNAiを行い、孵化後発生における表現型を微分干渉顕微鏡で観察している。現在、約300個の遺伝子について孵化後発生の表現型解析を行った。その結果、約半数の遺伝子が生殖細胞形成、生殖腺形成、陰門形成の異常や成長異常などの表現型を示した。これらの事から、必須遺伝子の多くが発生過程において複数の機能を持つことが分かった。 大量の表現型情報のデータベース化のため、表現型は汎用性のある単語(項目)の組み合わせで記述することが必要であると考えられた。そのために孵化後発生の表現型を表す項目を検討した。複数の項目の組み合わせで記述した表現型ブロファイルはバイナリデータへの変換が可能であり、コンピューター解析に適している。胚発生と孵化後発生の表現型データベースから、胚発生と孵化後発生における遺伝子の機能的分類を行っている。また、胚発生と孵化後発生の表現型プロファイルの組み合わせから遺伝子のグループ化も行っている。胚発生と孵化後発生の両方で同じ表現型プロファイルを示した遺伝子群は両方の発生時期で機能していると考えている。
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