シロイヌナズナの葉緑体のゲノム上には約80程度の遺伝子がコードされているが、葉緑体自体を構成するタンパク質の大部分は核ゲノムにコードされている。このような核コードの葉緑体タンパク質の内、葉緑体形成に必須なものを網羅的に調べるために、作製した9425ラインの遺伝子破壊系統よりアルビノ変異体87ラインを単離した。その内、トランスポゾンによりタグされていたラインは38ラインであった。これらの変異体をalbino or pale green(apg) mutantと名付けた。アルビノ原因遺伝子がどのような機能を持つか調べた結果、光合成や色素合成に関与する遺伝子以外に、タンパク質や脂質などの輸送に関わる遺伝子、転写のコントロール、翻訳など、様々な機能をもつ遺伝子が含まれていた。 得られたアルビノ変異株をプレート上に播種し、3週間後に、植物体の色や形態の観察、各光合成パラメーターの測定、強光、弱光条件下での生育の観察、カロテノイド色素やクロロフィル量の測定、葉緑体の形態の観察を行った。その結果、apgmutantsをいくつかのグループに分けることができ、機能予測につながることが解った。 また、葉緑体遺伝子の発現解析を行うために葉緑体遺伝子チップの作製を行った。 さらに、apg1 mutantについて詳細な解析を行った。apg1 mutantは、pale green表現型を示し、葉緑体形成に異常が見られ、この原因遺伝子APG1遺伝子翻訳産物は、メチルトランスフェラーゼと相同性があり、葉緑体の内包膜の主要な構成蛋白質で、細胞分裂の盛んな若い組織で多く発現していることを確認した。さらに、内包膜に多く存在し、メチル化のステップを経て合成されるプラストキンノンがapg1では検出できないことから、本酵素が確かにプラストキノンのメチル化に関与することを明らかにした。
|