今年度はアジドチロシンを認識するように基質特異性が改変された酵母のチロシル-tRNA合成酵素変異体と酵母のアンバーサプレッサーtRNA^<Tyr>を大腸菌の無細胞翻訳系に加えることでタンパク質へアンバーコドン特異的にアジドチロシンを導入する方法を用いてアジドチロシンをラットのカルモデュリン(CaM)に導入することを試みた。導入部位としてCaMの結晶構造から活性に影響を与えないと考えられる部位を選択した。CaM合成後、アジド基選択的に各種蛍光標識化トリアリールホスフィン誘導体を用いて修飾を行った。 各種蛍光標識化トリアリールホスフィン誘導体を用いて修飾反応の時間による変化を確認したところ、40分ほどでほとんど修飾反応は終わっていることから、本方法は穏和な条件でかつ短時間に修飾出来るという点で画期的であると考えられる。また、ゲルシフトアッセイ法により蛍光修飾CaMの基質との結合活性の検出を試みたところ、確かに標識物でも結合活性を持つことが確認できた。現在までに蛍光修飾物によりその部位特異性を確認することは出来なかったが、ビオチン化トリアリールホスフィン誘導体を用いて修飾を行った場合は質量分析によりCaM1分子にビオチン1分子が付加していることが確認できた。さらにトリプシン消化後、Peptide Mass Fingerprint法およびMS/MS Ion Search法により指定したアンバーコドン特異的にアジドチロシンが導入され、そのアジド基選択的にビオチン修飾が行われたことを確認した。
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