今年度は、反応性を有するスクシイミドエステル基をもつトリアリルフォスフィン誘導体とアミノ基を有する各種蛍光物質とあらかじめ反応させることでアジド基修飾用トリアリルフォスフィン誘導体を調製し、その後アジド基を含むタンパク質と反応することを検討した。実際にはAlexa350、Alexa488、テトラメチルローダミンおよびAlexa648などの蛍光分子を有するトリアリールホスフィン誘導体を調製し、アジドチロシンを部位特異的に持つカルモデュリン(CaM)と反応させ、蛍光修飾を行った。各種蛍光標識が確認できたことから、目的に応じた官能基を有するトリアリールホスフィン誘導体の簡便な調製法が確立できたと考えられ、更なる有用性を持たせることができた。 上記方法により調製した部特異的テトラメチルローダミン修飾CaMを用い、基質タンパク質との相互作用解析を行った。確認方法として、ゲルシフトアッセイ法、蛍光エネルギー移動の検出および1分子蛍光解析装置による解析の3種類により行った。前2つの解析方法では基質ペプチド融合蛍光タンパク質を利用し分子間相互作用の解析を行ったところ、ゲル移動度の違いが確認されたこと、また基質由来蛍光タンパク質から、CaMに導入した蛍光分子への蛍光エネルギー移動が確認できたことから相互作用が確認でき、今後これを利用した網羅的解析への第一歩を踏み出すことができた。また3つめの方法においてはCaM抗体を用いて解析を行ったところ非常に少量のサンプル量で解離常数を算出できたことから、今後の更なる展開が期待できる。
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