一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO_2)、亜酸化窒素(N_2O)、ペルオキシナイトライトなどいわゆる活性窒素分子種(reactive nitrogen species)は、ニトロセイティブ・ストレス(nitrosative stress)を生物に与えることが知られつつある。ニトロセイティブ・ストレスは、酸素ストレスと同様に生物のシグナル伝達や防御機構に重要な役割を持つ一方で、細胞や組織に損傷をもたらすことも知られている。植物においてもこれらの活性窒素分子種によるニトロセイティブ・ストレスが生体防御や成長・発生に関与していることが示唆されているが、その分子的実体についてはほとんど分かっていない。そこで、本研究ではニトロセイティブ・ストレスの分子的実体を明らかにするために、植物における活性窒素分子種への応答を網羅的に調査することを目的とした。本研究では応答たんぱく質を網羅的に調査解析するためにプロテオミクス解析を行った。 植物材料としてシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を用いた。NOx暴露チャンバー内で8時間暴露後したシュートから粗タンパク質を抽出した。粗タンパク質抽出液を二次元電気泳動法により分離した。ゲル中のタンパク質スポットをメンブレンにブロッティング後、Sypro Ruby染色および抗亜硝酸還元酵素(NiR)抗体を用いてウェスタンブロット解析を行った。または、銀染色後、GS-800 calibrated densitometerを用いて泳動図を取り込み、PDQuestソフトウェアを用いてスポット解析を行った. 植物葉の可溶性タンパク質の0.1%以下で、活性窒素種の一つであるNO_xによりその発現・活性が誘導されることが報告されているNiRについて解析した。抗NiR抗体を用いたウェスタンブロット解析とSypro Ruby染色の結果、抗NiR抗体と反応するNiRタンパク質スポットは、Sypro Rubyで染色され、検出された。さらに、銀染色の結果、暴露前後ともは、ゲル1枚あたり約1000個のスポットが観察され、その内の600スポットに高い再現性が観察された。約50個のスポットについてNO2暴露前後で4倍以上の差が観察された。
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