一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO_2)、亜酸化窒素(N_2O)、ペルオキシナイトライトなどの活性窒素分子種(reactive nitrogen species)は、ニトロセイティブ・ストレス(nitrosative stress)を生物に与えることが知られている。ニトロセイティブ・ストレスは、酸素ストレスと同様に生物のシグナル伝達や防御機構に重要な役割を持つ一方で、細胞や組織に損傷をもたらすことも知られている。植物においてもこれらの活性窒素分子種によるニトロセイティブ・ストレスが生体防御や成長・発生に関与していることが示唆されているが、その分子的実体についてはほとんど分かっていない。そこで、本研究ではニトロセイティブ・ストレスの分子的実体を明らかにするために、植物における活性窒素分子種への応答を網羅的に調査した。 二酸化窒素(4ppm)を含むまたは含まない大気中、自然光下で栽培(4週間)したシロイヌナズナのシュートおよび根からタンパク質を抽出した。ついで二次元ゲル電気泳動法でタンパク質スポット(蛍光染色)を分離後、±二酸化窒素でスポットを比較した。差が観察されたスポットをゲル内消後peptide mass finger printing法により、タンパク質の同定を図った。その結果、シュートでは、約1000個のタンパク質スポットのうち、50-100個が、二酸化窒素曝露により、シグナルが減少または増加した。シグナルが減少するスポット数が相対的に多かった。これまでに、半数以上のタンパク質が同定された。これまで調べた限り、二酸化窒素曝露により、ストレス応答関連タンパク質シグナルは増加するのに対し、代謝関連応答タンパク質シグナルは減少する傾向が認められた。根については現在解析中である。
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