研究概要 |
枯草菌スポアは休眠状態の細胞で熱や化学薬品などに対して耐性を示す.外部環境の変化に伴い増殖に有利な状態になるとスポアは発芽して,再び栄養増殖を行うようになる.枯草菌スポア形成期特異的なプロテアーゼYabGがスポア内に存在する.YabG の他にも,枯草菌スポア内にはいくつかの既知のプロテアーゼが存在することがわかった(Kuwana et al.,2002). 既知のプロテアーゼの各遺伝子欠損株を作製した.また,ホモロジー検索により,プロテアーゼと相同性の高いタンパク質に対して,その遺伝子欠損株も作製した.各遺伝子欠損株から得られたスポアのタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により行った.ほとんどのプロテアーゼ欠損株において顕著な変化は見られなかった.しかし,Tgl欠損スポアにおいてのみ,得られたPAGEパターンが野生株とくらべて大きく異なっていた.そこで,Tglの発現をノーザンハイブリダイゼーションによる転写解析を行った.Tglの発現は枯草菌スポア形成期に特異的なシグマ因子SigKに依存しており,転写因子GerEによって負の制御を受けていることがわかった.また,本年度の研究によリGerEによって制御されている遺伝子群はSpoVIFにも影響を受けることが確認されたSpoVIF遺伝子欠損によるスポアも耐熱性が低下することがわかった(Kuwana et al.,2003).このことにより,YabGやTgl影響を受けるタンパク質もGerEまたはSpoVIFの支配下あると推察される.さらに,YabGとTglによって影響を受けるタンパク質についても解析を行う必要がある.
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