研究概要 |
1.哺乳類細胞への応用 これまでの本研究でdictyopyrone類はヒト白血病K562細胞に対して増殖抑制作用を示すことが示されている.そこで,他の腫瘍細胞としてヒト非小細胞性肺ガン由来NCI-H460細胞および乳ガン由来MDA-MB231細胞に対する作用を検討した.その結果,いずれの細胞に対しても20-30μMでその増殖を抑制することが明らかとなった. 2.細胞性粘菌から新たな生物活性物質の探索 昨年度の本研究で,Dictyostelium brefeldianumおよびD.giganteumの培養子実体より,brefelamideと称する新規化合物を単離・構造決定している.そこで,様々な生物活性試験を行うのに十分な量を供給するため,本化合物の全合成を行った.また,本化合物はヒトアストロサイトーマ1321N1細胞の増殖を抑制し(EC_<50> 10μM),フローサイトメトリーの解析からG2/M期で細胞周期を停止させていることが明らかとなった. 一方,D.firmibasisの培養子実体からdihydrodictyopyrone AおよびCと称する新規化合物を単離・構造決定した.これらの化合物はそれぞれdictyopyrone AおよびCにおけるα-pyrone環の3,4位間の二重結合が還元された構造を有している.そこで,dihydrodictyopyrone Cの全合成を行い合成して得られた化合物を用いて細胞性粘菌D.discoideumの細胞増殖および細胞分化に対する影響を検討した.その結果,ほとんど活性は見られなかった.このことから,dictyopyrone類の生物活性の発現には3,4位間の二重結合が必須であることが示された.
|