高等植物シロイヌナズナのZ型プレニル鎖延長酵素の反応機構および生理機能を明らかにするために以下の解析を行い、新たな知見を得た。 1.シロイヌナズナのZ型プレニル鎖延長酵素の大腸菌内における大量発現と機能解析 シロイヌナズナの6つのZ型プレニル鎖延長酵素相同遺伝子.(AtCPT1、3、4、6、8、9)について、遺伝子産物の機能を解析するために大腸菌における発現系を構築し、抽出したタンパク質を用いてプレニル鎖延長反応の活性測定を行った。その結果、AtCPT3のみが有意な触媒活性を示し、反応産物の解析の結果から炭素数50前後のプレニル鎖延長反応を触媒している事が分かった。 2.シロイヌナズナのZ型プレニル鎖延長酵素の酵母内における大量発現と機能解析 各AtCPTにういて、出芽酵母の変異株SNH23-7D内における発現系を構築した。SNH23-7D株はZ型プレニル鎖延長酵素遺伝子の変異株であり、温度感受性の表現率を示すが、各AtCPT遺伝子を発現する事によりこの表現系が抑圧された。そこで、各AtCPTを発現している酵母より膜画分および可溶性画分に含まれる粗タンパク質を抽出し、酵素活性を測定した。その結果、各AtCPTを発現させた酵母の膜画分の全てが有意な触媒活性を示し、反応産物の解析の結果から、炭素数90前後のプレニル鎖延長反応を触楳している事が分かった。一方で、可溶性画分を用いた活性測定の結果、AtCPT3のみが炭素数50前後のプレニル鎖延長反応の触媒活性を持つ事が分かった。 以上の結果から、今回解析を行った6つのZ型プレニル鎖延長酵素のうちAtCPT3は、真核生物の膜画分に含まれる何らかの因子により、その生成物鎖長を大きく変化させることができるという事が示唆される。この様な鎖長制御機構はこれまでに報告がなく、自由に生成物鎖長をデザインできる人工酵素の作成に向けての大きな足掛かりとなった。
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