研究課題
奄美大島産スナギンチャクZoanthus sp.より単離構造決定されたNorzoanthamineは、7個の環が縮環した極めて特異な骨格を有したアルカロイドで、2004年の宮下らによる全合成で絶対配置を含む全化学構造が確定した。Norzoanthamineの生物活性としてはin vivoにおいて、閉経後骨粗鬆症モデルである卵巣摘出マウスへの腹腔内投与により、骨重量、骨強度の低下を強力に抑制することが知られている。また、塩酸塩にすることでより低用量で強い効果を示す事が分かっており、その活性の違いにも興味が持たれる。そこで、本研究ではNorzoanthamineの骨に対する効用を解明するために、光親和性標識体を含む各種誘導体の合成を目的とした。Norzoanthamineはその構造上、誘導化のためには構造変換が不可欠であるが、現在までに報告されている変換例はジアゾメタンによるδラクトンのメチルエステル化のみであり、その化学的性質も明らかにされていない。そこで、比較的反応性が高いと考えれるδラクトンとA環のエノンの2箇所を反応の起点とし、以下Norzoanthamineの誘導化を行ったのでここに報告する。Norzoanthamineには酸性条件下で10位のアミナール構造を介したδラクトンの開環平衡が示唆されており、その平衡により生成するカルボン酸とアルコールを反応させることでエステル形成ができると考えられる。そこで種々のアルコールを酸性条件下で作用させた結果、立体障害の小さいアルコールに対し望むエステル体を形成することを確認した。この結果をふまえてアミンの導入を目的としてエタノールアミンを反応させたところ、望むエステル体のアミン部位が結合し閉環したアミン体が得られた。またNorzoanthamineはNaBH_4による還元によりδラクトン部位の骨格転移が起こると報告されており、A環の還元を行うことができないため、ヒドラゾン形成によりアミン体への誘導化を行うこととした。その結果、フェニルヒドラジンによりA環が選択的にヒドラゾン化され、目的のヒドラゾン体を得ることに成功した。現在、合成した2種の誘導体について、骨関連細胞に対する活性を評価するとともに光親和性標識体の合成計画を検討中である。
すべて 2006 2005
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ChemBioChem 7
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