研究概要 |
1.5'α,8'-シクロ-ABAのin vitro代謝検討 本研究中に,シロイヌナズナCYP707AがABA8'-水酸化酵素遺伝子として同定された。そこで,この遺伝子を昆虫細胞で発現させて得たABA8'-水酸化酵素活性ミクロソーム画分を使って,5'α,8'-シクロ-ABAの水酸化反応を調べた。その結果,前年度に報告したin vivo実験と同様に5'α,8'-シクロ-ABAは全く水酸化を受けないことがわかった。また,5'α,8'-シクロ-ABAはABAの弱い拮抗阻害剤になっていることも明らかになった。 2.ABA8'-水酸化酵素の基質特異性 これまでに合成した45種類のABAアナログを用いて,ABA代謝不活化の鍵酵素であるABA8'-水酸化酵素の基質特性を精査した。まず,シロイヌナズナCYP707A3ミクロソームを用いて,すべてのアナログの水酸化実験を行い,水酸化のための構造要求性を調べた。次に,ABAとABAアナログを同時に供与して水酸化実験を行い,ABAアナログのABA水酸化阻害活性を測定した。その結果,(1)水酸化される部位(C-8')とその近傍(C-9')を修飾すると,水酸化を受けない,(2)側鎖のカルボキシル基を還元したり空間配置を変化させると水酸化を受けない,(3)側鎖6位のメチル基と環1'の水酸基を除去しても水酸化を受ける,ということが判明した。また,水酸化を受けないアナログの多くがABA水酸化阻害活性(拮抗阻害)を示した。この結果は,ABA8'-水酸化酵素の水酸化反応に対する基質構造要求性は比較的厳しく,基質結合部位への結合に関する構造要求性は水酸化反応の場合ほど厳しくないことを示唆している。以上の情報は,ABA8'-水酸化酵素に特異的な阻害剤を創製するのに極めて有用である。
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