オーリライドは海洋動物タツナミガイ由来の環状デプシペプチドであり、腫瘍細胞に対して強力な細胞毒性を示す。しかしその標的生体分子は現在のところ不明であり、詳しい生物活性も調べられていない。そこで、オーリライドの生物有機化学的研究の一環としてオーリライドの抗腫瘍性発現の分子機構を解明することを目的として以下の研究を行った。まず、オーリライドの合成で収率が悪かった段階について改良を行った。脂肪酸部の合成において向山アルドール反応の原料にシリルケテンアセタールを用いたところ、収率が向上した。また、マクロラクタム化反応において縮合剤や反応溶媒について検討した結果収率が大幅に向上し、オーリライドの通算収率が12%まで向上した。これによってオーリライドをグラムスケールで供給する方法が確立できた。そこでオーリライドの合成品を用いて、様々な生物活性試験を実施した。その結果、オーリライドはタキソールとは異なる機構で微小管の重合を安定化することが判明した。また、プロテインキナーゼやP-糖タンパク質には作用しないことも分かった。現在、in vivo抗腫瘍活性試験などを検討している。また、6位の立体化学が異なる6-エピオーリライドについて細胞毒性試験を行ったところ、全く細胞毒性を示さなかった。分子中のたったひとつの立体化学の違いにより、活性が劇的に変化したことは興味深い知見であり、さらに構造活性相関について検討する予定である。
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