研究概要 |
カルシウム結合型発光タンパク質であるイクオリンは、189アミノ酸残基よりなる分子量約21,400ダルトンのアポイクオリンとルシフェリンペルオキシドの複合体であり、1M以上の高濃度硫酸アンモニウム溶液中で安定に存在する。高濃度硫酸アンモニウム溶液中でNMR測定を行ったが、測定感度が著しく低く、解析可能なスペクトルが得られなかった。そこで、低塩濃度あるいは非存在下での安定性を検討したところ、常温で徐々にカルシウム非依存型の発光反応がおこり、その半減期は約14日と比較的短いことがわかった。さらに反応後の試料の光散乱測定の結果から、アポイクオリンを主成分とする反応生成物が不規則に凝集していると考えられた。一方、高濃度溶液でのNMR測定について各種塩溶液について検討したが、パルス長の増大や測定感度の低下などの理由で、良質なNMRスペクトルを得ることは困難を極めた。NMRによる立体構造解析を進める上では、溶液条件による測定感度の低下を避けることが重要である。そこで、常温で良好なNMRスペクトルを得るため、イクオリンの安定化剤の検索を目的として、種々の添加物存在下で、動的光散乱法による分子会合状態、円二色性分光法による二次構造、および^<15>N標識体を用いたNMR法における^<15>N-HSQC測定によって高次構造の評価を行った。その結果、2価イオンの存在下で、イクオリンの安定性は改善され、スペクトル解析が可能なNMR測定条件を見いだすことができた。
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