研究概要 |
本課題の第一の目的は,一年目の昨年度においてほぼ達成されている。すなわち,申請者の定点観察地である北京市郊外の一村落(以下,北京と呼ぶ),山東省煙台地区の一村落(以下,山東と呼ぶ)に加え、南方の江西省南部地域からも新しく一村落を選択し、北京、山東と同様の項目について集中的な現地調査を申請期間の第一年目において実施した。その中で,調査地の自治活動,リーダーシップの特徴,それを取り巻く文脈を、江西地域の歴史的展開をも踏まえて明らかにした。 二年目の平成16年度においては,上記のコンテキストというものを、既存の北京、山東と比較対照していくことで、中国の村落自治のあり方を決定する変数を抽出し、個別のコンテキストを越えた次元での,ある程度の理論化作業を進めた。得られた結論は,(1)村落事務に必要な資源を個人的な「関係」を利用して外部から調達し,それゆえ外部依存型のリーダーシップが見られる北京,(2)同じく必要な資源を村の集団資産の経営から調達する経営,分配型リーダーシップの山東とは異なり,(3)内陸の江西では,公共的事業に必要な資源を,さほど豊かではない村民世帯から公平に調達する必要があり,そのために説得や民主的手続きを取りつつ,「動員・調整型」のリーダーシップが必要とされることが見出された。
|