3年計画の最終年度である平成17年度は、収集済み資料の分析を集中して行った。また、得られた結果を既存の理論枠の中にいかに位置づけるかについて検討した。 フランス国土地理院にて、1950年代の旧仏領西アフリカ・ギニア地域の航空写真を購入した。この写真によって判別できる当時の土地利用と現在の森林分布、土地利用状況を照らし合わせた。これらと現地での聞き取り調査による知見とを組み合わせ、ギニア南部の二つの集中的調査村における前世紀後半の土地利用に関する変遷の大略を描き出すことができた。昨年度より注目している円形森林パッチの分布についても、これまでの聞き取りと現在の分布調査で分かってきた歴史的変遷を、上記の航空写真によって確認することができた。また、集中調査村であるボッソウ村の村落林において、DBH50cm以上の大木の毎木調査を行い、樹種構成や森林内の配置を細密な分布図として描き出すことに成功した。 上記の成果は、主として二つの方向で貴重な知見をもたらした。一つ目は、現在村と政府機関との間に起こっている自然資源の管理を巡る争いの中で、上記の歴史的土地利用に基づいた森林動態の認識および将来の保全モデルについて、村人と外来者との間に大きな溝があることが分かってきた。将来の保全モデルに関する合意形成のためには、双方の間で歴史的な経緯を共有する必要があることが指摘できる。二つ目は、このような村落林の初期形成について、村落防衛のために円形に村を囲むように大木を配置する伝統的営為が、その起源となっているという仮説が検証されつつある。調査村を含む複数の村で森林の円形構造が記述できた。聞き取りからも同様の説話が得られており、今回の毎木調査によって確認された樹種構成のデータとともに、この地域の村落林形成に関する概要を描くことができたと考える。
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