(1)国内での研究 1)現地調査:屋久島および鹿児島県鹿児島市、薩摩川内市周辺で現地調査を実施した。平成15年度に引き続き、地域で採集、栽培された有用植物のローカルな流通を担う場としての「無人販売所」や「物産館」の機能に注目し、そこで売買される野生植物、栽培植物、そしてその加工品についての一次資料を蓄積した。また、イネ科野生植物のジュズダマについて、自生地を観察し、生育状況を調査した。 2)植物資料の観察:国立民族学博物館(大阪府吹田市)の常設展示室と収蔵庫を訪問し、また佐藤優香氏(国立民族学博物館が依頼研究員)の協力を得て、ジュズダマを利用した民族資料の閲覧、観察し、その地理的分布や用途、植物種について調査を行った。これにより、南アメリカ、ニューギニア、オセアニア地域における利用の地理的な広がりについて、重要な知見を得ることができた。 (2)海外での研究[台湾] 台東大学游珮助教授と龍谷大学大学院生林麗英氏による全面的な協力を得て、以下の調査を実施した。 1)現地調査:台湾の「原住民」のうち、アミス(台東県)、タオ(蘭嶼島)、ルカイ(屏東県)、サイシャット(苗栗県)の各集落を訪問し、ハトムギとジュズダマについての認識や利用方法、関与などについて聞き取ると同時に、民族資料を収集した。また、服飾デザイナーとして活動するパイワン女性(屏東県)とトルク女性(台北市)からは、ジュズダマの現代的な利用について、聞き取りを行うことができた。 2)植物資料の観察:国立台湾史前文化博物館(台東市)、順益台湾原住民博物館(台北市)では、民族資料を、台湾大学植物標本庫(台北市)では植物標本を、それぞれ閲覧することができた。これにより集落を訪問できなかった原住民の利用や、過去におけるハトムギ、ジュズダマの分布について、基礎的な情報を収集することができた。 (3)植物葉標本の作成:支援者小田原祥子氏の雇用により、有用植物の葉標本作成作業を実施した。 (4)その他:アガリン・ナガセ氏(KAFLINセンター、埼玉県蕨市)を訪問し、平成17年度のフィリピン、ミンダナオ島現地調査に向けて予備情報を得るため、現地の状況や植物利用についてインタビューした。
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