本研究課題の目的は、バングラデシュ農村における災害からの「回復能力」の男女差とその変容を、マクロな社会経済変動と女性政策の進展という視点から究明し、防災・環境保全政策に有効にジェンダーの視点を盛り込む手法を提示することである。 本年度は当初の計画に沿い、以下のとおり研究を実施した。 1)方法論上の検討と日本国内での資料収集。まず、国内で災害・防災分野でジェンダーの視点が導入された研究事例を収集し、回復能力、脆弱性、エンタイトルメントなど本研究課題の主要概念について調査・分析手法を検討した。 2)バングラデシュにおける資料収集。平成16年2月に首都ダカで、(1)災害・防災政策におけるジェンダー課題の取り込み、(2)災害被害関連統計を中心に資料を収集し、来年度以降に行う農村調査の対象地域で活動するNGOと政府防災局(Disaster Mitigation Bureau)を訪問して各機関の活動地域内での調査の許可を得た。 3)収集資料のとりまとめと理論的枠組みの再検討。これまでの収集資料を、災害から被害と回復能力のジェンダー格差を構成する機会と資源の分配の変容、防災対策へのジェンダーの視点の導入(または未導入)、女性政策の歴史などの観点からまとめ、分析手法、理論的枠組みの再検討を行った(作業継続中)。概要を国際ジェンダー学会の分科会で5月に報告する予定である。 今年度の主な成果は、近年ますます住民参加型、地方分権型の計画草案という傾向を強める防災対策において、政府・NGOのプロジェクトとも、女性の参加は形式上進められているものの、女性の方が災害時に死亡率、罹病率が高いなどの格差を是正することを考慮し、回復能力を高めるという方向性を持っていないことが確認できた点である。来年度は政策におけるジェンダー課題の取り込みが現場でどのように活用されているか確認したい。
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