本研究課題の目的は、バングラデシュ農村における災害からの「回復能力」の男女差とその変容を、マクロな社会経済的な変動と女性政策の進展という視点から究明し、防災・環境保全政策に有効にジェンダーの視点を盛り込む手法を提示することである。 本年度は当初の計画に沿い、以下のとおり研究を実施した。 1)前年度研究成果のとりまとめと理論的枠組みの再検討。 前年度バングラデシュにて収集した資料を、災害からの回復能力のジェンダー格差を構成する機会と資源の分配の変容、防災対策へのジェンダーの視点の導入、女性政策の変化の観点からまとめ、分析手法と理論的枠組みを再検討した。 2)学会報告と意見交換。 1)の結果を、国際ジェンダー学会(9月12日)および日本南アジア学会(10月2日)で口頭発表した。現在その内容を、雑誌論文として投稿中である。また「ジェンダー平等と防災に関する国際セミナー(ハワイ、8月)」にて意見交換を行った。 3)現地調査の準備と実施。 バングラデシュにおける農村調査を2月から3月にかけて行った。調査予定の2地域を、今年度と来年度に一箇所ずつ調査する予定であったが、予定を変更し、2地域において、(1)1990年代中頃以前と以降における災害被害の男女差、(2)災害からの回復能力の構成要素の中で、ジェンダー格差を形成する要素、(3)コミュニティ防災への女性の参加などに関して予備的な調査を行った。 今年度の主な成果は、災害回復力の構成要素となるリソースベースの分析枠組みを予備的に調査に使用しその分析手段としての有効性を確認できたことである。また、国際社会で「防災におけるジェンダー課題」として認識されている課題と農村レベルの防災におけるジェンダー課題には大きな隔たりがあることが確認され、地域の実情を政策に反映させる必要が理解された。
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