本研究の目的は、ドメスティック・バイオレンス(以下DVと略)を受けた女性障害者への支援を検討することにある。 DVを受けた女性障害者への支援の実態を把握するために、(1)先行研究の収集・整理、(2)過去にDVを受けた女性障害者を支援した2つの団体に電話によるヒアリングを行った。 (1)については、DVを受けた非障害女性たちの実態をまとめた事例集や彼女らへの支援のあり方などをまとめた文献は多くあったが、DVを受けた女性障害者の実態把握や彼女らへの支援のあり方などをまとめた文献は皆無と言っても過言ではないことが明らかになった。 (2)については、1つの団体は障害の有無にかかわらず、問題を抱えた女性を支援するためのNPOである。もう1つの団体は女性、男性を問わず「障害者一般」の自立生活支援のための障害者団体である。前者は、フェミニスト・カウンセラーがDVを受けた女性障害者2名と直接会って相談に対応している。後者は、電話相談である。2つの団体への電話によるヒアリングからは以下の点が明らかになった。(1)シェルターが女性障害者が利用できるようなバリアフリーになっていないため、救済を求めて相談に来たDVを受けた女性障害者が隠れる場所がないということ。(2)仮に、バリアフリーのシェルターがあったとしても、障害の種類、障害の軽重を問わず、多少に関わらず、女性障害者の生活介助が必要となるが、介助者の確保を保障できないということ、などである。2004年2月16日に、DV法改正案骨子が出され、その中に「外国人、障害者等への対応」が組み込まれた。これは、「女性」+「障害者」という二重の社会的不利に対応できる制度、法律への着手という点において画期的であると思われるが、具体的な対応策などが示されておらず、具体的な対応策の検討が今後の課題となることなどが明らかになった。
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