本研究課題に関連して2004年度に行った研究の成果は、以下の4点にまとめることができる。(1)人工物に対する志向的分析、(2)人工物に関するリスク分析の哲学的基礎に関する研究、(3)技術者の行為分析としての、技術者倫理に関する研究、(4)人工物環境と生命の設計の関係に関する考察。 (1)に関しては、2004年5月に香港中文大学で行われた国際会議において、"Artifacts and Intentionality : Toward a Phenomenology of Technique and Technology"(人工物の志向的分析-技術と科学技術の現象学に向けて)を発表した。また、本発表の原稿を書き直し、2005年に出版予定の論文集に寄稿した。 (2)に関しては、『思想』(岩波書店)2004年7月号の特集「リスクと社会」に論文を寄稿した。本論文では、人工物の設計・製造側のリスク認知と利用者(一般市民)とのリスク認知の差異などについて論じている。また、2005年1月には、同志社大学において、講演「リスク分析の哲学と倫理学」を行った。 (3)に関しては、2004年10月に出版された『電気学会誌』(2004年10月号)のゲスト・エディターとして「技術者倫理教育」の特集を企画するとともに、論文を2本投稿した。両論文の中で、技術者倫理が技術者の行為および認知の特殊性と密接な関連を持っていることを明らかにした。 (4)に関しては、2005年3月末に行われる予定の国際宗教学宗教史会議第19回世界大会(IAHR TOKYO 2005)のシンポジウムで、発表"Artificial Environment and Designing Life"(人工物環境と生命の設計)を行う予定である。本発表では、生命の人工物化に関する議論の検討を通じて、人工物一般に関する哲学的分析を深める予定である。
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