• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2005 年度 実績報告書

言語を語る主体の生成の解明…ハイデガー哲学の批判的改訂の試み

研究課題

研究課題/領域番号 15720003
研究機関山口大学

研究代表者

古荘 真敬  山口大学, 人文学部, 助教授 (20346571)

キーワードハイデガー / 動物と人間 / 共同体 / 生と死 / 時間 / 人称的世界
研究概要

初年度以来、我々は、"言語主体としての<私>もまた動物的生命との連続を欠いては生成しえない"という原始的事実の意味を明らかにし、そのことによって、"人間存在と動物存在との絶対的断絶"を語るハイデガー的思考の枠組みを流動化することを目指してきた。昨年度、日本現象学会編『現象学年報20』に発表した論文において、我々は、こうした問題意識のもと、後期ハイデガー哲学におけるラチオ(ratio=理由)概念の批判に学びつつ考察を展開し、いわゆる「理由の空間」の生成こそは、「ニヒリズム」と「Gestell」の結実を準備し、「戯れ」としての本来的「自然」の概念を切り捨てて、我々の「生」と「死」の意味を空洞化した存在史の展開点であったと推察するに至った。
今年度、我々は、上記のラチオ概念の批判を承けつつ、1936年から38年に成立した『哲学への寄与論稿』におけるハイデガーのロゴス論の帰趨を検討することを試み、そこにおいて「存在者トシテノ存在者on he onを一者henとするギリシア的な解釈」(GA65,459)へと向けられた彼の批判が、畢竟、いわゆる「共同体」概念を脱構築することを狙うものとして了解しうることを見出した。ギリシア的に根源的なロゴス概念の基底を掘り崩しつつ、彼が狙っていたのは、別言すれば、「我々」という表象を繋ぎとめている「一ニシテ共通ノ世界」(ヘラクレイトス断片89)を、むしろ本質的に「各自的」で「固有ナモノidion」へと一旦散乱させ、その錯綜的多様体の力動性のうちに「存在」の要求を反復させることであったと解釈される。ハイデガー自身の意図を超えて、この洞察を拡張すれば、それはまた、人間的生(bios)と動物的生命(zoe)の差異が再流動化するさなかにおいて、我々の意味の秩序と自然の秩序との差異の根源が反復され、ある「底無しの没根拠Abgrund」としての「時間」の根源が闡明されることを意味している。
『山口大学哲学研究』第13号に発表した拙論「時の過ぎ去り-人称的世界の時間的構造の探究のための準備的考察-」において、私は、この最後の時間論的観点を、狭義のハイデガー解釈の枠組みにはとらわれない仕方で、一般的に展開し、「時の過ぎ去りVergehen」の重層的経験のうちに、我々の「生」と「死」の意味あるいは無意味を、照らし出すことを試みた。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2006

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 時の過ぎ去り-人称的世界の時間的構造の探究のための準備的考察-2006

    • 著者名/発表者名
      古荘 真敬
    • 雑誌名

      山口大学哲学研究 第13巻

      ページ: 23-36

URL: 

公開日: 2007-04-02   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi