本年度は主に以下のような実施計画を立てた。(1)国内図書館における所蔵状況の調査。(2)『九部経解』デジタルデータ化の底本である国会図書館所蔵本の全件複写。(3)『九部経解』デジタルデータ変換発注。(北京書同文数字化技術有限公司)(4)『山草堂集』の全件複写と解題作成着手。(1)は京都大学人文科学研究所のデータベースを中心に、既存の目録類を参照して予備調査とした。内閣文庫に『九部経解』刻本が二本所蔵されていることが分かり、現地調査の結果、毛利高標旧蔵に由来する一本は完本であることがわかった。現時点では我が国にある『九部経解』唯一の完本であり、電子テキスト化は該本を底本とすべきであろうが、マイクロから起こす必要があり、相当の費用がかかることから、事前調査で使用予定にしていた国立国会図書館所蔵本を用いることとし、該本は版本の基礎調査に必要な箇所のみ複写した。一方、すでにマイクロ化されている、国立国会図書館所蔵『九部経解』は(一部抄本)全件複写した。所蔵状況のデータベース化については、いくつかの機関について実地調査を行ったところ、京大人文研のデータベースの情報がすでに非常に完備された状態であることを再認識し、これに付加価値をつけられるかどうか検討している最中である。電子テキストの作成については、書同文数字化技術有限公司より提示された金額が、当初の予定を大幅に上回ったが、今回のプロジェクトの根幹であることから費用の一部を次年度に持ち越すこととして予定通り実施することとし、発注した。なお、このデータは来年7月に完成の予定である。翻刻許可が下り次第仮公開をし、校訂の完了したものから順次本公開していく。 『山草堂集』の解題作成に関しては、全件複写するまでの予算の余裕がないことから、今回は予備調査にとどめたが、これも〓敬研究の基礎資料となることから、小山草を中心に予定通り解題を作成することとしたい。
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