昨年に引き続き九部経解のテキストデータ化を進め、7月に完成した。テキストデータについては著作別にフォルダに入れたものを仮アップし、研究者に提供することにし、その際不明な文字については個別に問い合わせに応じる予定である。 その後内閣文庫蔵『九部経解』及び『山草堂集』の調査を進め、2005年2月には国家図書館(北京)、湖北省図書館(武漢)、浙江省図書館(杭州)、復旦大学図書館(上海)を調査した。湖北省図書館と浙江省図書館では当該書籍の実物を見ることができなかったが、国家図書館では『山草堂集』、復旦大学図書館では『九部経解』の原本を見ることが出来、内閣文庫蔵のものと比較していくつかの知見を得た。『山草堂集』については、1:北京国家図書館蔵本は内外編揃った完本であった。2:内閣文庫蔵『山草堂集』は、端本ではなく、北京図書館本系統のものを再編集したものであった。3:再編集の課程で「小山草」の一部の差し替えが行われ、北京図書館本にない文章が内閣文庫本に存在していた。 『九部経解』については、1:湖北省図書館・復旦大学図書館とも完本は所蔵していない。2:内閣文庫本所蔵の二本は同一の版木からなっているが、細部について微修正が加えられており、それは単に文字の誤りの訂正にとどまらず、内容の訂正に及んでいる。3:影印出版されている復旦大学蔵「礼記通解」は、版本系統を分析するのに重要な箇所が別本に差し替えられている。4:内閣文庫蔵の二本のうち一本は最も早く印刷されたもので、国会図書館蔵本はもっとも新しい形である。 これとは別に国家図書館を調査した際に『国朝大家制義』という書物中に〓敬の制義文が収録されているのを発見した。『山草堂集』にも制義文を載せた篇があるが、該書には『山草堂集』未収録のものも含まれている。今後は該書の調査を行い、〓敬の文章の収集とともに、該書自体の特徴も明らかにしてみたい。
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