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本年度は、主として入宋して日本禅宗を開創した日本人禅僧の思想とその創建になる寺院を中心に研究を進めた。
まず、思想に関する研究では、栄西の『興禅護国論』の読解を進めてみたが、特に風水に関係するような文言は検出されなかった。ただし、関連資料として読解した諸資料の中で『洛城東山建仁禅寺開山始祖明庵西公禅師塔銘』等に、風水との関係を匂わせる文言があることが判明した。
また、寺院の直接調査としては、栄西の開創した京都の建仁寺と福岡の聖福寺、道元の開創した京都深草の興聖寺などでの調査を行なった。このうち建仁寺は、伽藍が南北に一直線上にではなく、三門・仏殿跡・法堂が南東よりから北西よりに向けてジグザグに配置されていること、聖福寺でも三門と仏殿が同様に傾いていることが判明した。これらはいずれも創建時とほぼ同じ位置にこれらの諸建築が配置されており、また南北を基準としながらも正南・正北を結ぶ南北の直線軸を排除する江西系の風水の特徴と合致している。従って、自明のようにされている「禅宗寺院は南北軸に沿って中心伽藍が一直線になっている」ということが、少なくともこの二ヶ寺には当てはまらないことが明らかとなった。特に聖福寺は中世の町割りとの関係をもう少し調査する必要があることも判った。興聖寺については旧境内地の確定をまずすべく臨んだが、発掘調査・小地名のいずれによっても確定することができず、風水との関連を見出す調査を打切った。
本年度は、当初予定していたもののうち、道元関係のものについての調査が不十分となったので、この点については次年度にその不足を補うこととする。
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