「生命形態」の認識と現代美術の表現との関わりを通して、諸外国のArt概念の比較検討し、日本独自の文化、芸術、教育体系をあらためて<制作学>から位置づけることが、本研究の目的である。 本年度の具体的な研究内容は下記の学会で報告した。 1)第25回美術科教育学会 横浜国立大学 「現代美術の「身体」と「場」との関係-英米の《美術》の現況とその制作背景から-」 英国の現代美術家、ゴームリー(Antony Gormly)、ナッシュ(David Nash)を中心に、現代美術における「制作学」の意義を「身体」と「場」との関わりから考察した。 2)日本美術教育連合 研究発表会 聖心女子大学 「<場>で語る美術〜『Family & Frontier』英国展の企画を通して〜」 鈴木美樹(福島学院短期大学)との共同研究、英国のロンドンで開催された展覧会『Family & Frontier』の企画内容から。 本展で収集された子ども達が描いた「家族」の作品から、日本と米国、英国の美術と「家族」にたいする意識を比較検討した。 3)大学美術教育学会 北海道教育大学旭川校 「<型取り>はなぜARTになったのか?〜現代美術における身体とメディアとの関わりからの一考察〜」 「型取り」作品を、写真などの映像メディアに焦点をあてて、「身体」との関わりから再考察した。 4)第26回美術科教育学会 広島大学 「"A"レベルの「スケッチブック」〜英国の《美術》の現況とその制作背景から〜」 英国の中学、高等学校で制作された「スケッチブック」を通じて、日本における美術教育と比較検討し、現代美術の<制作>と美術教育との関わりを考察した。具体的には、「スケッチ」「ドローイング」の概念、「スケッチブック」のBrain Storms、現代美術と英国の美術教育カリキュラムと評価など。 結果、日本において懸隔が著しい現代美術の「実技」領野と、「理論」研究の結びつきを、具体的に提示したいと考えた。「消費される芸術の学」=<享受学>と峻別された「作られつつある芸術の学」=<制作学>は、英国の現代美術を主題にすると密接な結びつきがみられるものである。<制作学>は「芸術」分野に限定するものではなく、宗教、言語、神話、哲学、科学技術、習俗と法、政治など、作品の観念に包摂される数多くの活動とも関わることから、結果、制作することと語ることに横たわる<制作学>固有の「身体」知を再構築することが可能であると考えられた。 以上、標題の研究の第一段階とし、次年度に続く一応のまとめを行なった。
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