1.以下の方法で多くの映像資料を調査、昭和十年代の日本映画においてモダニズムが国策に回収されてゆく過程を個々のテクストに即して分析した。(1)諸外国のモダニズム映画を含むビデオ・DVDを購入。(2)山形国際ドキュメンタリー映画祭に参加(10月13〜16日)、沖縄特集を中心に通常は視聴困難な貴重な映像作品を調査。(3)合衆国国立公文書館2号館において未返還の占領軍接収フィルムを同定調査(8月25〜31日)。かつてのモダニストたちがモダニズムの手法を活用して製作した「大東亜共栄圏映画」を約16本視聴した。 2.当該作品の背景を探り、それらをめぐる言説、観客受容の実態を分析するため、(1)早稲田大学演劇博物館・国立国会図書館等で文字資料を体系的に調査。(2)モダニズム、映画史関連文献を購入、理論的な考察を深めた。 3.研究成果は「研究発表」に掲げたもの以外にも以下の形で発表、きわめて有益なフィードバックを得つつある。(1)「<日本>の二つの顔--『医者のゐない村』と日中戦争期の農村」(岩本憲児編『日本映画とナショナリズム1931-1945』森話社)、「上海・南京・北京--東宝文化映画部<大陸都市三部作>の地政学」(岩本憲児編『虚構の大東亜共栄圏』森話社)、「上海の憂鬱--東宝文化映画部『上海』の地政学」(『立教大学日本学研究所年報』4号)が近日刊行。(2)上記「上海の憂鬱」を明治学院大学日本映画史研究会で発表(12月23日)。(3)シカゴ大学東アジア言語・文明学部より招聘を受け、3月4日に米国サンディエゴでのOrganization for Asian Research(アジア学会AAS年次大会と連携して開催)で発表、8日に同大学でワークショップを行った(単行本『映画の政治学』で研究代表者が分担執筆した「柳田國男と文化映画--昭和十年代における日常生活の発見と国民の創造/想像」の英語版)。
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