本年度は3年間の研究期間のまとめに当たり、そのことを念頭に置きつつ、次の研究課題への課題も意識しながら研究を展開した。前年度まで進めてきた研究により、日系アメリカ移民における文学およびその担い手たる文学青年たちのあり方が、興味深い課題であり、また本研究全体の射程をさらに拡張してゆける材料であることが判明していた。そこで本年度はそれをふまえ、日本国内における文学青年の形成過程と、移民送出の動機付けがどのように関連しているのかを調査した。一般的な概況をふまえつつ、とりわけ翁久允と永井荷風の場合について個別事例として掘り下げた。さらに、北米文壇の形成と当地における日本語環境の整備がどのような関係にあるのかを、書物の流通-とりわけ日本人街の初手起点の役割を追跡しながら分析した。以上の研究成果は、「11.研究発表」に記載した永井荷風の『あめりか物語』論のほか、次の研究会でも報告を行っている。「Intertwined Branches : Issei and Japanese Literature」(The 2005 Annual Meeting of the Association for Asian American Studies)、「日本文学」の範囲とは?-日系アメリカ移民の日本語文学から考える」(2005年度京都教育大学国文学会)、「サンフランシスコの日本語空間 一世文学の成立基盤を考える」(マイグレーション研究会2005年度第3回例会)。
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